コマツ(6301)の事業の現状 ── 関税と中東の逆風が「想定より軽い」。1Qからの異例の上方修正を読む

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(2026年8月20日時点の公表情報・報道に基づく記事です。本記事は投資助言ではありません)

建設機械で世界2位、小松製作所(コマツ、6301)。今期は「米国関税」「中東情勢」「インドネシアの鉱山需要減」と逆風のオンパレードで、期初予想は2期連続の減益見通しだった。ところが7月29日の第1四半期決算で、同社は早くも通期予想を全利益段階で上方修正し、株価は一時11%高まで買われた。何が想定と違ったのか。事業の現状を整理する。

事業構造のおさらい

コマツの収益の柱は3つある。中核の建設機械・車両部門が売上の9割超を占め、油圧ショベルやブルドーザーなどの一般建機に加え、超大型ダンプトラックなどの鉱山機械が利益面の主役だ。海外売上比率は約9割に達し、実質的にグローバル景気・資源市況・為替の関数として動く。これに建機販売を金融面で支えるリテールファイナンス部門、半導体露光用エキシマレーザー(ギガフォトン)や工作機械・鍛圧機械などの産業機械他部門が続く。

強みは機械を売った後にある。稼働状況を遠隔管理するKOMTRAX、施工全体をデジタル化するスマートコンストラクション、鉱山の無人ダンプ運行システム(AHS)と、機械×データのサービスで部品・サービス収益を積み上げるモデルが確立しており、市況が悪い年でも利益率が崩れにくい体質を作っている。

第1四半期(2026年4〜6月)── 2桁増収、価格と円安が効いた

7月29日発表の第1四半期実績は以下のとおり。

  • 売上高:1兆431億円(前年同期比+14.7%)
  • 営業利益:1,516億円(同+8.0%、営業利益率14.5%)
  • 税引前利益:1,400億円(同+6.7%)
  • 純利益:962億円(同+5.4%)

けん引したのは主力の建設機械・車両部門で、外部顧客向け売上高は9,650億円(+14.6%)。円安の為替効果に販売価格の改善が重なり、北米・中南米・アフリカでの売上増が寄与した。増収率に対して営業増益率が低い(利益率は前年の15.4%→14.5%へ低下)のはコスト増と関税負担を吸収しているためだが、この環境下で2桁増収・増益を確保したこと自体が想定より強い。

通期上方修正 ── 「関税120億円減、中東の需要減も半分」

市場が反応したのは通期予想の修正幅だ。期初予想からの変更は、売上高4兆1,180億円→4兆3,020億円(+1,840億円。前期比0.4%減収予想から4.1%増収へ転換)、営業利益5,080億円→5,550億円(+470億円。減益幅は10.5%減→2.2%減へ縮小)、純利益3,180億円→3,490億円(前期比7.3%減)。年間配当は190円で据え置きだ。

修正の理由は2つで、どちらも「逆風が想定より弱かった」という内容である。

米国関税:一部関税率の変更により、通期の関税負担は期初想定から120億円減の258億円へ縮小する見通しとなった。

中東情勢:緊迫化に伴う中近東・アジアの需要減少が「想定より限定的だった」(菱沼執行役員)。売上へのマイナス影響は期初想定の901億円から463億円へほぼ半減。一方で物流ルート変更による追加陸送費は44億円増の232億円を見込むが、差し引きでは大幅な改善だ。

地域別では明暗がある。インドネシアは石炭輸出管理の国営化などで鉱山機械需要の減少が見込まれる一方、中南米・アフリカの銅・金鉱山向けは堅調で、建設機械・車両部門の通期売上は期初の減収予想から一転、前期比4.0%増の3兆9,494億円を見込む。石炭からベースメタル・貴金属へ、鉱山需要の重心が移っていることが読み取れる。脱炭素・電動化で長期的に需要が増える銅の鉱山向けが伸びているのは、建機メーカーとしては筋の良い成長だ。

「保守的なコマツ」が1Qから上げてきた意味

コマツの業績予想には有名な癖がある。期初計画を保守的に置く傾向が強く、2026年3月期までの5期はすべて実績が期首計画を上回って着地した。5期平均の上振れ幅は売上高4,000億円・営業利益1,100億円で、それと比べれば今回の修正額(売上+1,840億円・営業+470億円)は「平常運転の範囲」とも言える。ただし、この5期間に第1四半期の段階で上方修正した例はなく、今回が初めてだ。慎重な会社が早い段階で数字を上げてきたこと自体が、社内の手応えを示すシグナルとして市場に受け止められた。

決算は取引時間中の発表で、株価は一時前日比11.0%高の7,452円まで上昇し、終値でも7.6%高の7,265円。もっとも、修正後の純利益3,490億円はアナリストコンセンサス(3,692億円)をなお下回っており、市場は「まだ保守的」と見ている節がある。過去の癖どおりなら期末に向けてさらなる上振れ余地を探る展開だが、それは裏を返せば、既に株価がある程度それを織り込みにいっているということでもある。

まとめ ── 逆風の中で「値上げ・円安・銅」が支える

現状のコマツを一言でまとめれば、「関税・中東・インドネシアという3つの逆風を、価格改善・円安・中南米アフリカの資源需要で相殺し、お釣りが来ている」状態だ。前期(2026年3月期)は営業利益5,673億円で13.7%減益、今期も期初は2桁減益予想だったが、足元では2.2%減までの浅い減益に修正され、過去の上振れ実績を踏まえれば増益着地すら視野に入る。

リスク要因も明確で、(1) 関税率の再変更(影響額258億円は前提次第で膨らむ)、(2) 為替の円高転換(海外比率9割ゆえ感応度が大きい)、(3) 中東情勢の再悪化、(4) インドネシア鉱山需要の一段の落ち込み。この4点と、四半期ごとに開示される需要・稼働データを追っていけば、この会社の現在地は大きく見誤らないはずだ。

参考

  • コマツ「2027年3月期 第1四半期決算短信」および決算説明会資料(2026年7月29日)
  • ロイター「コマツ、通期予想を上方修正 米関税・中東情勢の影響が想定下回る」(2026年7月29日)
  • ニュースイッチ「営業益5550億円…コマツ、通期上方修正の主要因」(2026年7月30日)
  • Finasee「コマツ 慎重見通し裏切る上方修正、株価一段高」(2026年8月)
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