メタプラネット(3350)の現在地 ── 4万3,000BTCの含み損、11億株超への希薄化、そしてBTC7万ドル回復で何が変わるか

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(2026年8月20日時点の公表情報・報道に基づく記事です。概算値を含みます。本記事は投資助言ではありません)

日本のビットコイン・トレジャリー企業の代名詞、メタプラネット(3350)。株価は2025年6月の高値1,930円から下げ続け、足元は228円前後(8月19日時点)と高値の約8分の1まで沈んでいる。一方でビットコイン(BTC)は今日8月20日、規制法案への期待から急騰し6月以来となる7万ドル台を回復した。保有BTC・希薄化・事業内容という3つの軸で、この会社の現在地を棚卸ししておきたい。

BTC保有量 ── 43,000BTC、ただし平均取得単価は1,533万円

会社開示による直近の保有量は43,000BTC(2026年6月30日時点)。取得原価の累計は6,592.56億円で、平均取得単価は1BTCあたり15,331,542円。2026年第2四半期には2,823BTCを平均12,712,055円で買い増した。保有量では米ストラテジー(76万BTC超)に遠く及ばないものの、今年4月にはMARAホールディングスを抜いて世界第3位のビットコイン保有企業に浮上している。会社目標は2026年末10万BTC、2027年末21万BTCと、現在の5倍近い規模を掲げたままだ。

問題は足元のBTC価格である。BTCは2025年10月6日に126,198ドルの史上最高値をつけた後に調整入りし、今年の年初約9.3万ドルから8月には一時6.4万ドル近辺まで下落した。本日8月20日は、トランプ大統領が暗号資産の規制区分を定める「Clarity法案」の可決を議会に強く求めたことや米財務省の長期債買い戻し拡大を材料に急騰し、6月2日以来となる7万ドル超え(一時7.2万ドル台)となったが、それでも1年前より4万ドル以上低い。

円建てで概算すると、1BTC=7万ドル・1ドル145〜150円なら約1,015万〜1,050万円。平均取得単価1,533万円に対して3割強の含み損であり、43,000BTC全体では取得原価6,593億円に対して時価はおよそ4,400億〜4,500億円、含み損は概算で2,100億円規模に達する(BTC価格・為替で日々変動する)。「BTCを買えば買うほど資産が増える」フェーズは終わり、高値圏で積んだ在庫の評価損を抱えて耐えるフェーズに入っている。

希薄化 ── 発行済株式は11億株超へ。ただし「歯止め」も設計されている

メタプラネットのBTC購入資金は、その大半を株式・新株予約権による調達に依存してきた。結果として発行済株式数は約11.6億株(今年春時点の報道ベース)まで膨張している。2024年4月のBTC戦略開始時に約20円だった株価が一時1,930円まで急騰し、その熱狂の中でワラント行使が進んだ2025年3〜8月が希薄化のピークだった。BTC保有量(分子)が増えても株式数(分母)がそれ以上に増えれば1株あたりのBTCは薄まる──株価がBTC価格の下落率を大きく上回って下げた主因はここにある。

ただし現在の資金調達スキームには歯止めが組み込まれている点は押さえておきたい。主力の第27回新株予約権は、行使価額が前営業日終値に日々修正される(ディスカウント0%)うえ、mNAVが1.01倍以上のときにしか行使できない条項がついている。実際、第2四半期には527万株が行使・発行された一方、株価が低迷した7月の行使はゼロだった。また会社は資本政策の方針として、mNAV1倍未満では原則として普通株式による調達を行わず、逆に自己株式取得を行うことを明文化しており、2025年11月には750億円の自社株買いを実施、優先株式(MERCURY転換優先株・額面236.1億円)など普通株を直接増やさない調達手段への多様化も進めている。「株価が安いときに無限に刷って希薄化する」構造ではなくなっている点は、初期のイメージのまま語られがちなので補足しておく。

そのmNAV(企業価値÷BTC保有時価)は、2024年7月の熱狂期には約8倍のプレミアムがついていたが、2025年10月に0.88倍まで低下し、今年5月13日時点でも0.94倍(株価327円、時価総額約4,185億円に対しBTC時価約5,128億円)と1倍割れ。株価がそこからさらに3割低い現在は、BTCの円建て時価の下落を考慮しても1倍割れが常態化しているとみられる。理屈のうえでは「BTCを市価より安く買える」状態だが、裏を返せば市場はBTC以外の事業価値と、含み損・負債(無利息円建て社債80億円、外貨建て負債約672億円など)を差し引きで評価しているということでもある。

事業内容 ── トレジャリーの脇に「インカム事業」と1軒のホテル

メタプラネットの前身は格安ホテルを展開していたレッドプラネットジャパン(さらに遡ればダイキサウンド)で、2024年4月8日にBTCを主要準備資産とする方針を決議、同年12月18日にビットコイン・トレジャリー事業を正式事業と位置づけた。現在の事業は実質3本柱だ。

  1. ビットコイン・トレジャリー事業:本体。上記のとおり
  2. ビットコイン・インカム事業:保有BTCを裏付けにオプション(プット売り等)のプレミアム収入を得るキャッシュフロー事業。四半期ごとに売上を開示しており、BTCが動かなくても収益を生む数少ない稼ぎ口
  3. ホテル事業:旧事業の名残で1軒のみ残存し、「The Bitcoin Hotel」としてリブランドされている

つまり「事業会社」としての中身はごく薄く、実態は上場BTCファンドに近い。だからこそ評価軸はPERではなくmNAVと1株あたりBTCになる。

BTC7万ドル回復で何が変わるか

本日のBTC急騰は、メタプラネットにとって単なる評価額の回復以上の意味を持ちうる。この会社の資本政策はmNAVを閾値に設計されているため、BTC上昇→株価上昇→mNAVが1.01倍を回復→ワラント行使が再開→調達資金でBTC買い増しという好循環のスイッチが再び入る可能性があるからだ。逆にBTCが再び6万ドル前半へ沈めば、行使は止まり、10万BTC目標は絵に描いた餅になる。エンジンのオン・オフがBTC価格そのものに握られている──これがこの銘柄の構造だ。

投資対象として見る場合の整理はシンプルで、(1) BTCの3倍前後の値動きをする高ベータのBTC連動株であること、(2) 現在はmNAV1倍割れ=資産価値ディスカウントで放置されていること、(3) ただし含み損2,000億円規模・株式数11億株超という過去の代償を背負っていること。BTCに強気なら「割引価格のBTC」に見えるし、弱気なら「レバレッジのかかった下落装置」に見える。どちらに見えるかは、結局BTCをどう見るか次第である。

参考

  • メタプラネット「ビットコインの追加購入に関するお知らせ」(2026年7月2日、43,000BTC・平均取得単価15,331,542円)
  • CoinDesk「Metaplanetは5,075BTCを取得し、BTC保有額で業界3位に」(2026年4月2日)
  • CRYPTO TIMES「メタプラネット株がmNAV1割れ」(2026年5月13日)
  • Yahoo Finance/Fortune/The Block 各紙のBTC価格報道(2026年8月20日)
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