SpaceX(SPCX)上場から2か月 ── 最初のロックアップ解除を通過、事業は「Starlinkが稼ぎ、AIが使う」構図が鮮明に

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(2026年8月20日時点の情報に基づく記事です。本記事は投資助言ではありません)

6月12日に史上最大のIPOとしてNASDAQに上場したSpaceX(ティッカー:SPCX)。当ブログでは上場直後に段階的ロックアップ構造の全体像を整理したが、あれから2か月あまりが経過し、最初の大きな関門だった「初回決算+第一次ロックアップ解除」を実際に通過した。本稿では、ロックアップの進捗状況と、初の公開決算で見えてきた事業の現在地をまとめる。

株価の現在地

まず値動きのおさらいから。IPO価格135ドルに対して初日終値は161ドル台(+19%超)と華々しいスタートを切ったが、7月中旬には一時IPO価格を割り込む場面があった。上場熱の剥落、AI部門の巨額赤字への警戒、そしてロックアップ解除を先回りした売りが重なった格好だ。

その後、8月4日の決算を境に持ち直し、8月19日時点の株価は142ドル前後、時価総額は約1.95兆ドル。初日終値にはまだ届かないが、IPO価格は回復している。上場からわずか2か月で、52週レンジは104.83〜225.64ドルと、値幅の激しさは折り紙つきだ。浮動株比率が極端に低いまま指数採用(7月7日にNasdaq 100へ早期編入)された銘柄特有の乱高下と言える。

ロックアップの進捗 ── 「最初の崖」は無事通過

前回記事で解説したとおり、SpaceXは通常の「180日一括解除」ではなく、段階的な解除構造を採用している。その進捗を確認しよう。

8月4日:上場後初のQ2決算発表。 解除スケジュールの起点となるイベントで、決算発表の2営業日後に対象インサイダーの保有株最大20%が売却可能になる設計だった。

8月6日:第一次解除。 約9億1,150万株、金額にして約1,000億ドル相当がロックアップから外れた。市場が最も警戒していた瞬間だったが、蓋を開けてみれば売り崩しは起きず、当日の株価はむしろ6.1%高で引けた。出来高は急増したものの、買い需要が解除売りを吸収した形だ。決算内容が良好だったことが「解毒剤」になったと評されている。

8月20日(本日):次の時間ベース解除。 上場から約70日にあたる本日、時間経過に基づく追加トランシェ(7%)の解除日を迎える。以降も90日・105日・120日・135日と小刻みに解除が続く。

今後の主なスケジュール:

  • Q3決算発表後:追加28%が解除可能に(11月頃見込み)
  • 2026年12月9日:標準の180日ロックアップが満了。大半の保有者が完全解除
  • 2027年6月13日:マスク氏個人に適用される366日ロックアップが満了

なお、株価条件による前倒し解除条項(終値が10営業日中5営業日で175.50ドル以上なら追加10%解除)は、現在の株価水準(142ドル前後)からはかなり距離があり、当面は発動しそうにない。

第一次解除を無風で通過したのは強気材料だが、供給量として最大なのは12月の180日満了だ。「最初の崖を越えたから安心」ではなく、年末までは需給イベントが続くという構造は変わっていない。

Q2決算 ── 数字で見る事業の現在地

8月4日に発表された上場後初の決算(2026年4〜6月期)は、市場予想を上回る内容だった。

  • 売上高:78.1億ドル(前年同期比+92%)
  • 純損失:5.41億ドル(前年同期の10億ドル超から大幅縮小)
  • 調整後EBITDA:35億ドル(同+191%)
  • 手元資金:現金・有価証券あわせて約1,000億ドル

セグメント別に見ると、事業構造がよく分かる。

セグメント売上高損益
Connectivity(Starlink)42.9億ドル(+66%)営業利益 16.6億ドル
AI(Grok・データセンター等)25.6億ドル営業損失 12.6億ドル
Space(打上げ・開発)9.6億ドル営業損失 5.4億ドル

稼いでいるのはStarlink一本足であり、その利益をAI部門とロケット開発が食う構図だ。Starlinkの契約者数は1,200万件と前年から倍増し、CFOは年内に年間経常収益1,000億ドルペースへの到達を見込むと発言している。一方で加入者あたり平均収入(ARPU)は国際展開と低価格プラン投入により前年比22%低下しており、「量で伸ばし単価は薄まる」局面に入っている。

懸念材料 ── AI設備投資と膨らむ負債

市場が最も神経を尖らせているのがAI部門への投資規模だ。Q2の設備投資は184億ドルと過去最大級で、その大半がxAI統合後のAIインフラ(Grok、データセンター)に向かっている。負債・ファイナンスリースの総額は3か月で220億ドルから368億ドルへ急増した。

強気派はこれを「Starlinkのキャッシュと1,000億ドルの手元資金に裏打ちされた攻めの投資」と評価し、弱気派は「収益化の道筋が見えないまま資本を燃やしている」と見る。アナリスト目標株価が62ドルから800ドルまで開いているのは、この評価の割れ方をそのまま反映している。売上高約187億ドル(2025年)に対して時価総額約2兆ドルという評価が維持できるかは、AI部門の収益化スピード次第だろう。

事業面のトピックとしては、Starship 13回目の飛行試験で上段機体を豪州近海に誘導・回収するなど完全再使用化への開発が進んでいるほか、ベトナムVinSpaceの2027年打上げ契約獲得など受注も積み上がっている。もっとも、こうした個別の契約獲得に株価はほとんど反応しなくなっており、市場の関心が「宇宙」から「AIの損益」に移っていることがうかがえる。

まとめ ── 年末までは需給、来年以降は業績

上場2か月の総括としては、(1) 最大の懸念だった第一次ロックアップ解除を好決算とセットで無風通過した、(2) Starlinkの成長は本物だが、AI投資の規模が損益と財務を圧迫している、(3) 12月の180日満了まで需給イベントは続く、という3点に集約される。

個人投資家として見るべきカレンダーは明確だ。11月のQ3決算(+28%解除)と12月9日の完全解除。この2つを通過した後、2027年からはようやく「需給」ではなく「業績」で語れる銘柄になる。それまでは、指数採用による資金流入と解除売りが綱引きする、値動きの荒い展開が続くと見ておいたほうがよい。

参考

  • 当ブログ過去記事:SpaceX(SPCX)ロックアップ解除の全体像(2026年6月)
  • Bloomberg「スペースX株が上昇、9億株ロックアップ解除を市場は消化」(2026年8月7日)
  • Bloomberg「スペースX株が復調、決算の『解毒剤』でロックアップ解除の関門クリア」(2026年8月13日)
  • CNBC「SpaceX (SPCX) Q2 2026 Earnings Report」(2026年8月4日)
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