実績(2026年3月期)は逆で、売上収益が6.6%減の4兆5,392億円、コスト削減等により事業利益は前期並みの1,353億円を確保したものの、親会社の所有者に帰属する当期利益は23.6%減の701億円と、しっかり減収減益です。 Yahoo!ファイナンス
ところが同日発表の今期(27/3期)予想は派手で、売上収益は前期比6%増の4兆8,000億円、本業のもうけを示す事業利益は59%増の2,150億円、純利益は前期比2.1倍の1,500億円。事前の市場予想平均(QUICKコンセンサス、1,279億円)を上回ったので、額面だけ見れば「サプライズ良決算」のはずでした。 Yahoo!ファイナンスYahoo!ファイナンス
実際、取引時間中である午後2時の決算発表を受けて株価は一時前日比5%上がった。終値は2%高と、引けにかけて急速に勢いを失っています。これが「株価が下がっている」の正体です。 Yahoo!ファイナンス
なぜ売られたか — 主因は4つ
① 中東リスクが予想に未反映、と”自白”した
これが一番のキラーパンチでした。中東情勢の影響は予想に織り込んでいない。原油価格の上昇に伴い製品を運ぶ際の船舶用燃料や電気代などが高騰した場合、1カ月あたり100億円のコスト増が想定されると短信に明記してしまった。これ、Operation Epic Fury(米イラン軍事衝突)が長期化シナリオに入っている今のマーケットに対して、「我々の1,500億円は平時前提です」と言っているのと同じです。仮にWTI$100が12ヶ月続けば▲1,200億円、純利益予想ほぼ吹き飛ぶ計算。掲示板でも「業績予想に織り込まないでしれっとイラン戦争の影響未反映と書いちゃうから下がる」と、ここを的確に突いた書き込みが目立ちます。 Yahoo!ファイナンスYahoo!ファイナンス
② 1,500億円の増益要因の”質”が悪い
増益の中身を分解すると、主力の鉄鋼事業の事業利益は2.6倍の1,000億円を計画。高付加価値製品の販売増やコスト削減を進める。原材料価格の上昇で在庫評価益が改善することなどが610億円の増益要因。つまり増益額のかなりの部分が在庫評価益という会計上の利益で、実需の回復ではない。原料炭が下がれば即時に在庫評価損に転じる、典型的な循環株の罠です。 Yahoo!ファイナンス
③ 実需が弱い
単独粗鋼生産量は2,150万トン程度(前期は2,137万トン)とほぼ横ばい想定。自動車(4-5月の減産)、建設、無方向性電磁鋼板(EV向け過剰供給)と、需要サイドに底打ち感がない。過去12四半期は業績が悪化傾向。前年同期比で純利益率・営業利益率・EPS・ROEが低下という長期トレンドも変わっていません。 Yahoo!ファイナンスYahoo!ファイナンス
④ 材料出尽くし
決算前にある程度織り込まれていた + コンセンサス超えの数字は出たが、よく読むと前提が崩れやすい → 短期筋が利食い。+5%から+2%への失速がそれを示しています。
投資判断のフレーム
これは典型的な**「シクリカル株のearly cycle vs late cycle判別問題」**です。日産の底値拾い思考と同じで、JFEもPBRベースでは割安に見える局面ですが、
- 強気側: 1,500億円達成すれば配当80円、利回り換算で4.7%程度。中期計画の8次中期目標までの織り込みは皆無。インドBPSL/JJSL一貫製鉄が中長期の成長ドライバー。
- 弱気側: 中東リスク現実化で会社予想は脆い。中国の鋼材輸出圧力は構造問題で短期に解消しない。在庫評価益依存の利益の質。
エントリーするなら、「中東情勢が好転 or JFEが下方修正して織り込み完了」のどちらかのトリガー待ちが定石パターンだと思います。今の水準は「予想が良いから買い」ではなく、「予想の前提が崩れるリスクを織り込み中」のフェーズで、まだ下を試す動きが出やすい。掲示板で1,700円割れ・1,600円割れ視野という観測が出ているのも、この前提崩れシナリオを意識した動きです。
参考までに、日系中堅証券が11月にレーティングをやや強気(B+)に据え置き、目標株価を1,800円から1,915円に引き上げた水準が、レーティング上の天井イメージとして残っています。直近の年初来安値1,685円台と合わせると、1,700円割れは下方修正リスクの織り込み開始シグナルとして見られそうです。 Kabuyoho