2026年2月28日に開始された「オペレーション・エピック・フューリー」に対する米国世論の支持率は約38%にとどまり、近代米国史上、主要軍事作戦開始時点で最低の支持率を記録した。 10以上の主要世論調査の平均では、49%が反対、38%が賛成という結果であり、2001年のアフガニスタン戦争(90%支持)、2003年のイラク戦争(76%支持)、さらには2017年のシリア空爆(50%支持)と比較しても著しく低い。この歴史的な低支持率の背景には、イラク戦争の教訓に根ざす「戦争疲れ」、ガソリン価格高騰への不安、そしてトランプ政権が戦争目的を明確に説明していないという広範な不信感がある。
世論調査データが示す圧倒的な反対傾向
2026年2月28日の米・イスラエル合同軍事作戦「オペレーション・エピック・フューリー」開始後、主要世論調査機関が一斉に調査を実施した。その結果は一貫して過半数の反対を示している。
開戦直後のロイター/イプソス調査(2月28日〜3月1日)では、賛成27%、反対43%という結果であった。CNN/SSRS(3月1日)では賛成41%、反対59%、ワシントン・ポスト(3月1日)は賛成39%、反対52%と報告した。NPR/PBS/マリスト(3月2〜4日)では賛成44%、反対56%、キニピアック大学(3月6〜8日)は**賛成40%、反対53%**であった。唯一、フォックスニューズ調査(2月28日〜3月2日)が賛成・反対ともに50%と拮抗を示したが、ニューヨーク・タイムズのルース・イゲルニクは、イランの安全保障上の脅威に関する質問が先行していたことで支持率が押し上げられた可能性を指摘している。
注目すべきは、開戦前の世論がさらに否定的であった点だ。メリーランド大学の重要課題調査(2月5〜9日)では、米国がイランへの攻撃を開始することに賛成はわずか21%、反対49%、わからない30%であった。開戦後に支持率がやや上昇したものの、伝統的な「旗の下の結集効果」(rally-around-the-flag effect)は極めて限定的であった。
地上軍派遣については全調査で圧倒的な反対を示しており、キニピアック調査では**74%が反対、賛成はわずか20%**であった。共和党支持者の間でさえ、52%が地上軍派遣に反対している。
党派による断絶は歴史的水準に達している
イラン戦争に対する世論の最も顕著な特徴は、党派間の極端な分裂である。共和党支持者の大多数が賛成、民主党支持者のほぼ全員が反対、無党派層は明確に反対寄りという構図が、すべての調査で一貫して確認された。
主要調査における党派別支持率
| 調査機関(2026年3月) | 共和党・賛成 | 民主党・賛成 | 無党派・賛成 |
|---|---|---|---|
| キニピアック(3/6-8) | 85% | 7% | 31% |
| NPR/PBS/マリスト(3/2-4) | 84% | 約14% | 約39% |
| CNN/SSRS(2/28-3/1) | 77% | 18% | 32% |
| NBC(2/28-3/3) | 77% | 11% | 約42% |
| ワシントン・ポスト(3/1) | 81% | 9% | 28% |
| ロイター/イプソス(2/28-3/1) | 55% | 7% | 19% |
共和党内部でも注目すべき分裂が生じている。CNN調査によれば、MAGA系共和党支持者は非MAGA共和党支持者と比較して「強く賛成」と回答する割合が30ポイント高い。NBC調査ではMAGA系の90%が空爆を支持(反対わずか5%)する一方、非MAGA共和党支持者の支持率は大幅に低い。この分裂は、共和党内における外交政策コンセンサスの崩壊を示唆している。
脅威認識にも党派差が顕著だ。共和党支持者の70%がイランを「重大な脅威」と認識する一方、民主党支持者でそう回答したのはわずか27%であった。さらに、トランプ大統領のイラン対応への支持率は全体で36〜38%にとどまり、共和党79%賛成に対し、民主党86%反対、無党派59%反対という結果であった。
性別・世代・人種による差異
党派以外にも、人口統計学的な分裂が鮮明である。男性の48%が軍事行動を支持する一方、女性は41%にとどまる。郊外在住女性に至っては、トランプのイラン対応を支持するのはわずか27%であった。
世代間格差も顕著で、**Z世代のトランプ・イラン対応支持率はわずか24%**と全世代で最低。18〜29歳の64%が軍事行動に反対している。唯一、50〜64歳の層のみが複数の調査で多数派として支持を示した。人種別では、黒人有権者の68%、ラテン系の60%が反対しており、白人有権者の反対率52%を大きく上回っている。
ソレイマニ殺害からエピック・フューリーまでの世論変遷
米国の対イラン世論は、過去6年間で複数の転換点を経て大きく変化してきた。
2020年1月のソレイマニ司令官殺害時には、ABC/ワシントン・ポスト調査で53%が空爆を支持した(共和党86%、無党派54%、民主党24%)。しかしこれは「標的殺害」であり、全面戦争ではなかった。この段階でもトランプのイラン対応支持率は42%にとどまっていた。
2025年6月の「十二日間戦争」(オペレーション・ミッドナイト・ハンマー)は、最初の重大な転換点となった。ナタンズ、フォルドウ、イスファハンの核施設へのバンカーバスター爆弾投下後、ロイター/イプソス調査では賛成36%、反対45%であった。共和党支持者の間では「旗の下の結集効果」が見られ、支持率が急上昇したが、民主党・無党派層には波及しなかった。
2026年1月のキニピアック調査(イラン抗議デモ弾圧に対する軍事介入の是非)では、70%が「関与すべきでない」と回答。共和党支持者でさえ53%が反対であった。メリーランド大学調査(2月初旬)の賛成21%は、開戦直前の世論がいかに否定的であったかを物語る。
開戦後の2週間で支持率はやや上昇したが(ワシントン・ポストの調査では3月1日の39%から3月6〜9日に42%に微増)、歴史的に見て「結集効果」は極めて弱い。2003年のイラク戦争では共和党93%・民主党59%が支持していたのに対し、今回は民主党支持者の支持が7〜18%にとどまっている。データジャーナリストのG・エリオット・モリスは「近代世論調査史上、国民がすでに反対している状態で主要軍事作戦を開始した大統領はいない」と指摘している。
特筆すべきは、トランプ支持者の中でさえ、クインシー研究所/アメリカン・コンサバティブの調査(3月12〜14日)で79%が「勝利宣言をして速やかに戦争を終結すべき」と回答している点であり、長期化への懸念は党派を超えて広がっている。
経済不安と戦争疲れが世論を支配する
世論を形成する最も強力な要因は、イデオロギーや安全保障上の脅威認識ではなく、経済的影響への懸念である。
キニピアック調査(3月6〜8日)では、74%が石油・ガソリン価格上昇を懸念(49%が「非常に懸念」)していると回答した。モーニング・コンサルトの調査では63%がガソリン価格上昇を心配しており、「価格に関係なく軍事作戦を続行すべき」と答えたのはわずか18%であった。イラン軍のホルムズ海峡封鎖により、タンカー通過量は1日138〜153隻から最少3隻にまで激減し、原油価格は1バレル119.50ドル(65%上昇)に達している。ペン・ウォートン予算モデルは2カ月の紛争による総経済的影響を500億〜2,100億ドルと試算している。
モーニング・コンサルトの別の調査(3月11日頃)では、74%が今年ガソリン価格が上昇したと回答し、48%がトランプ政権を値上がりの原因として非難している。トランプ支持者の55%もガソリン価格上昇を懸念しており、経済的影響が最も政治的に危険な要素となっている。
二番目に重要な要因は戦争目的の不明確さである。ワシントン・ポスト、CBS、イプソスなど複数の調査で、62〜67%がトランプ政権は戦争の目標を明確に説明していないと回答している。この数字は開戦後2週間を通じてほとんど変化しておらず、政権の情報発信が世論を動かせていないことを示している。
さらに、77%がイラン戦争の結果として米国本土へのテロ攻撃が起こる可能性が高いと回答し(キニピアック)、54%がイランは軍事行動の結果としてむしろ「より大きな脅威になる」と予想している(CNN)。米軍死者7名・負傷者約140名の時点で、ワシントン・ポスト調査の63%が「目標とコストを考慮すると死傷者は受け入れがたい」と回答しており、イラク戦争初期と比較して米国人の死傷者許容度は著しく低下している。
議会承認の問題も世論に影響を与えている。59%(キニピアック)から70%(CBS)が、トランプ大統領は軍事行動前に議会の承認を得るべきであったと回答。しかし党派差は大きく、民主党79%が「必要」と答える一方、共和党では34%にとどまっている。
メディア報道と情報戦が世論形成に影響
メディアの報道姿勢は世論形成において重要な役割を果たしており、トランプ政権は積極的に報道内容をコントロールしようとしている。
ヘグセス国防長官はCNNを名指しで批判し、バナーテロップを「中東戦争激化」ではなく「イランはますます追い詰められている」とすべきだと要求した。FCC委員長は戦争報道における「歪曲」を放送する局は免許を失う可能性があると示唆した。この政権によるメディアへの圧力は、ジャーナリストの間で自己検閲を助長する懸念を生んでいる。
アルジャジーラ・メディア研究所の分析によれば、欧米メディアは米・イスラエルの攻撃を「自衛」「抑止力」「報復」と枠組みする一方、イランの反撃を「エスカレーション」「挑発」と表現する傾向がある。報道の枠組みは大きく3つに分類される。欧米メディアの「戦略・軍事分析」中心の報道、イラン系メディアの「人道的被害」中心の報道、そしてアラブ系メディアの「地域安定・経済的影響」中心の報道である。
メディアの影響力を理解する上で興味深いのは、ショーエン・クーパーマン・リサーチの調査結果だ。イランの脅威について詳細な情報(10月7日攻撃への関与、地域紛争への支援、3万〜4万人の抗議者虐殺など)を提供した後、軍事行動への支持率は44%から51%に、反対は41%から34%に変化した。これは情報提供が世論を動かし得ることを示している一方、通常の報道環境では反対派が多数を占める現実も浮き彫りにしている。
プレスウォッチは「米国メディアはイランとの戦争に関する報道で国民の利益に応えていない」と批判し、世論調査データが示す広範な反対を十分に伝えていないと指摘した。
シンクタンクは「選択の戦争」のリスクを警告する
米国の主要シンクタンクや専門家の分析は、大きく3つの陣営に分かれている。
タカ派陣営(民主主義防衛財団=FDD、ハドソン研究所、アメリカン・エンタープライズ研究所など)は、軍事行動の継続を支持している。FDDのマーク・ドゥボウィッツは「戦争は恐ろしいが、初期目標がより多く達成されるまで継続すべきだ」と主張し、ハドソン研究所のレベッカ・ハインリクスはトランプのイニシアティブを「平和と安定のための重大な戦略的機会」と評価した。
抑制派陣営(クインシー研究所、国際危機グループ、一部のブルッキングス・カーネギー学者)は即時の脱エスカレーションを求めている。クインシー研究所のトリタ・パルシはこれを「差し迫った脅威のない選択の戦争」と呼び、タカ派シンクタンクが2024年に防衛関連企業から700万ドル以上の資金を受領していることを指摘した。アトランティック・カウンシルが最多の防衛企業資金(253万ドル)を受け取りながら、イランへの軍事オプションを積極的に推進していることが報告されている。
分析的中間派(CSIS、CFR、一部のランド研究所学者)は、より慎重な評価を提供している。カーネギー国際平和財団のカリーム・サジャドプールの分析は特に注目に値する。彼はこの紛争を「選択の戦争が必要の戦争に変容した」と表現し、トランプが「イランの反応を過小評価した」と指摘した。CSISのセス・ジョーンズは、米軍の弾薬備蓄(THAAD備蓄の25%以上を2025年に消費)と毎日約9億ドルの作戦費用を懸念材料として挙げている。
ブルッキングス研究所のスザンヌ・マロニーは、米国がテヘランにおける指導部交代に関する前提を再考し、代理勢力による日和見的なエスカレーションに備えるべきだと提言した。同研究所のエリザベス・サンダースは、作戦が軍事的に成功しても「米国の意思決定、民主主義、文民統制に関する疑問を提起し、最終的に米国の影響力を損なう可能性がある」と警告している。
CFRの2026年紛争リスク評価は、米・イラン・イスラエル紛争を「発生可能性と米国への影響の両面で最高レベル」の5大事態の一つに指定していた。ランド研究所は、中国とロシアのイラン支援が「極めて条件付き」であり、ロシアは情報共有は行うものの「軍事介入には踏み切っていない」と分析している。
議会の分裂とイラク戦争の教訓
議会における戦争権限をめぐる投票は、ほぼ完全に党派で分かれた。上院は47対53で戦争権限決議を否決し、下院は219対212で審議自体を阻止した。党を越えた投票は極めて少なく、共和党側からランド・ポール上院議員のみが民主党と同調し、民主党側からはジョン・フェッターマン上院議員のみが共和党と投票した。
シカゴ国際問題評議会のジョーダン・タマは明確な歴史的警告を発している。「戦争は時間の経過とともに不人気になるのが通常であり、死傷者とコストが増大するにつれて反対は強まる。」彼はベトナム戦争(議会が1973年に資金を停止)とイラク戦争(2006年の共和党議席喪失と2008年のオバマ当選に貢献)の前例を挙げ、2026年中間選挙への影響を予測している。
現在のところ、議会共和党はトランプをほぼ一致して支持しているが、地上軍派遣が検討される段階、あるいは長期化と経済的コストの増大局面では、亀裂が拡大する可能性が高い。民主党内でもイスラエル支持派(フェッターマン上院議員など)と反戦派の間に緊張が存在しており、AIPAC(米イスラエル公共問題委員会)から30万〜300万ドルの献金を受けた6名の下院民主党議員が、より穏健な30日間延長案に賛成したことが報告されている。
結論:歴史的低支持率が意味するもの
オペレーション・エピック・フューリーをめぐる米国世論は、いくつかの前例のない特徴を持つ。第一に、主要軍事作戦としては近代史上最低の初期支持率であり、「結集効果」がほぼ機能しなかった初めてのケースである。第二に、党派間の分裂が過去の紛争(イラク戦争では民主党の59%が当初支持)と比較して格段に深刻であり、事実上「二つのアメリカ」が全く異なる現実を認識している状態にある。
経済的要因が安全保障論理を圧倒しているという事実は、政策立案者にとって重大な意味を持つ。イランの核脅威に対する懸念は80%近くに達しているにもかかわらず、それが軍事行動への支持に転化していない。トランプ支持者の79%が「勝利宣言と速やかな終結」を望んでいるという調査結果は、長期化が政権の支持基盤そのものを侵食する可能性を示唆している。
今後の世論動向を左右する要因として、米軍死傷者の増加、ガソリン価格のさらなる高騰、戦争の長期化、そしてイランの報復テロの可能性が挙げられる。歴史的前例に基づけば、これらの要因はいずれも支持率を押し下げる方向に作用する。2026年中間選挙を控え、この戦争が米国の国内政治を根本的に再編する可能性は否定できない。