マクセル:全固体電池で世界を先行する電池メーカーの投資価値

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マクセル(6810)は、硫化物系全固体電池で世界初の量産を実現した唯一のメーカーであり、競合他社に対する明確な技術優位性を持つ。株価はPER 14.7倍、PBR 1.08倍と同業他社比で割安な水準にあり、2025年3月期は営業利益が前期比15.3%増の93億円と2ケタ成長を達成。 Maxellmaxell中期経営計画MEX26のもと、2030年度に全固体電池事業で売上高300億円Newswitch市場シェア10%)を目指し、現在の事業規模の約20%に相当する新たな収益柱の構築を進めている。


株価は競合比で割安、自社株買いで株主還元を強化

現在の株価水準(2025年1月14日時点)

指標数値備考
株価2,388円52週レンジ:1,476円〜2,548円
時価総額1,121億円中小型株
PER(会社予想)14.7倍同業TDK(25.6倍)、村田(28.9倍)の約半分
PBR(実績)1.08倍解散価値に近い水準
配当利回り2.09%年間配当50円、配当性向約31%

2025年4月に年初来安値1,476円を記録した後、12月に発表された容量4倍の全固体電池新製品開発が好材料となり、7年ぶり高値の2,548円を記録。直近は2,300〜2,500円台で推移している。特筆すべきは50億円規模の自社株買いを2025年1月に実施中であり、 FISCO総還元性向180%という株主還元の積極姿勢を示している。 Buffett Codemaxell

同業他社とのバリュエーション比較

銘柄PERPBR配当利回り時価総額
マクセル14.7倍1.08倍2.09%1,121億円
TDK25.6倍2.41倍1.32%4.7兆円
村田製作所28.9倍2.43倍2.0%7兆円
パナソニックHD16.6倍0.90倍2.16%4.5兆円

アナリストの平均目標株価は2,200円前後だが、日系大手証券は2,800円に引き上げており、現在株価から約17%の上昇余地がある。全固体電池の事業化進展次第では、さらなる見直し余地が残る。


営業利益は2ケタ成長、財務基盤は極めて健全

2025年3月期決算サマリー

項目実績前期比
売上高1,298億円+0.5%
営業利益93億円+15.3%
経常利益98億円▲0.2%
純利益41億円▲45.8%

純利益の大幅減は、角形リチウムイオン電池(LIB)の生産終了に伴う減損損失・特別退職金という一過性要因によるもの。 maxell本業の営業利益は医療機器用一次電池と理美容製品の好調により2ケタ成長を達成した。 Buffett CodeMaxell2026年3月期は純利益70億円(前期比+71%)とV字回復を見込む。 MinkabuYahoo! Finance

セグメント別業績(2025年3月期)

セグメント売上高構成比営業利益前期比
エネルギー366億円28.2%19億円+279%
機能性部材料318億円24.5%12億円▲14%
光学・システム359億円27.7%44億円▲21%
ライフソリューション255億円19.6%18億円+193%

エネルギー事業は、米国でCGM(連続式血糖値モニタリング)機器のOTC販売が解禁されたことを受け、医療機器用一次電池の需要が急拡大。** Buffett Codemaxellライフソリューション**は北米向け理美容製品(イズミブランド)が好調で大幅増益となった。一方、光学・システムは欧州自動車市場の低迷により車載カメラレンズが苦戦した。

財務健全性は業界トップクラス

自己資本比率**57.1%と極めて健全な財務基盤を維持。 Yahoo! Finance有利子負債は減少傾向にあり、 Yahoo!ファイナンス現金及び預金は約311億円。ROEは特別損失の影響で一時的に4.48%まで低下したが、2026年3月期には7.32%への回復を見込み、中期目標の10%**に向けて改善を図る。 maxell


中期経営計画MEX26:成長投資350億円で変革を加速

経営目標(2027年3月期)

指標2025年3月期実績2027年3月期目標
売上高1,298億円1,500億円
営業利益93億円120億円
営業利益率7.2%8.0%
ROE4.48%10.0%

中期経営計画「MEX26」では、3年間で350億円(前中計の2倍超)の成長投資を計画。 MaxellDempa-digital主な投資先は医療機器用一次電池増産(50億円)、塗布型セパレータ量産設備(27億円)、半導体DMS増産(20億円)などである。 maxell

重要な戦略的動き:村田製作所からの事業譲受

2025年6月、村田製作所からマイクロ一次電池事業を80億円で譲受することを発表。 Yahoo!ニュースLogi-today対象事業は売上高100億円規模、 Newswitch営業利益率10%程度であり、 Kabutan2027年3月期から業績に貢献する見込み。 Maxellこの買収により、医療用一次電池の増産体制整備 Newswitchと技術開発の加速が期待される。 Kabutecho


事業ポートフォリオと成長ドライバーの構造

マクセルの競争力の源泉は、60年以上の電池製造で培ったアナログコア技術(まぜる・ぬる・かためる)にある。 Buffett Code +2この技術を活かし、3つの注力分野で成長を図る。

注力3分野の成長ドライバー

モビリティ分野では、耐熱コイン形リチウム電池がTPMS(タイヤ空気圧監視システム)で世界トップシェアを維持し、LEDヘッドランプレンズでも世界トップシェアを有する。 FISCO塗布型セパレータはHEV市場の拡大に伴い好調が続く。 maxell

ICT/AI分野では、半導体製造工程用テープと電鋳製品(EF2)がAI需要拡大の恩恵を受ける。半導体DMSは下期以降の本格回復を見込む。 maxell

人/社会インフラ分野では、CGM市場の急拡大により医療機器用一次電池の需要が増加。筒形リチウム電池はガス・水道スマートメーター向けに事業拡大中である。 maxell


全固体電池:世界唯一の硫化物系量産メーカーとして先行

開発の歴史と技術的優位性

マクセルは2023年6月に京都事業所で世界初の小型硫化物系全固体電池の量産を開始した。 perspectivesMaxell競合他社(TDK、村田製作所等)が酸化物系を採用する中、マクセルは硫化物系固体電解質(アルジロダイト型)を採用し、差別化を図っている。 Wsew

特性マクセル(硫化物系)競合(酸化物系)
容量数mAh〜200mAh数μAh〜数mAh
容量優位性酸化物系の約100倍
動作温度-50℃〜150℃-40℃〜85℃程度
耐久性105℃で10年使用可能やや劣る

特に150℃対応の高耐熱技術は業界最高水準であり、過酷な環境で使用されるFA機器や車載用途で強みを発揮する。 Newswitch

採用実績と量産状況

すでに複数の企業で採用が進んでいる。ニコンの多回転アブソリュートエンコーダ、吉野家の調理用無線温度デバイス「NICK」、AI画像認識ユニット**「iXAM Vision Engine」などで実用化されている。2025年8月からはSUBARUの工場**で産業用ロボット向けにテスト運用が開始された。 Biz.maxell

量産化ロードマップ

時期内容
2023年6月セラミックパッケージ型の量産開始(投資額20億円)
2025年末IoTデバイス主電源用コイン形(PSB2032)開発
2026年度産業機器向け中型全固体電池(200mAh)量産開始予定
2030年度搬送ロボット向け大容量版の量産体制整備(数百億円投資)

競合との比較:ニッチ市場での先行者優位が明確

全固体電池市場における競合状況

企業電解質量産状況ターゲット市場
マクセル硫化物系量産中FA・医療・車載センサー
TDK酸化物系量産中IoT・通信機器
村田製作所酸化物系事実上凍結ウェアラブル
パナソニックハロゲン系2026年度サンプル予定産業機器
トヨタ硫化物系2027-28年実用化目標EV駆動用(大型)

マクセルは硫化物系で唯一の量産メーカーという独自ポジションを確立している。 Newswitch村田製作所、太陽誘電、FDKは量産に踏み切れておらず、 Nikkei直接競合がいない状況にある。 NewswitchトヨタはEV駆動用の大型電池に特化しており、 Hasimoto-sokenマクセルがターゲットとする小型~中型セグメントとは市場が異なる。

マクセルの競争優位性と課題

強みとして、先行量産の実績、酸化物系の100倍の大容量、150℃対応の耐熱技術、60年以上の電池製造ノウハウが挙げられる。 Nextmobility一方、課題としては、全固体電池のメリットがまだ市場に十分浸透していないこと、大型化への技術展開が今後の課題であることがある。


全固体電池市場の成長予測と業績インパクト

市場規模予測

全固体電池市場は年率30〜40%以上の高成長が見込まれる。 Gii富士経済によると、硫化物系全固体電池市場は2040年に2兆3,762億円に達すると予測されている。 Newswitch2020年代後半から本格普及期に入り、EV向け大型電池の量産開始とともに市場は急拡大する見通しである。 Fuji-keizai

マクセルの事業目標と業績インパクト

年度売上高目標全社売上に占める割合
2024年度数億〜10億円規模1%未満
2030年度300億円約20%

2030年度目標の300億円は、市場シェア10%に相当する。 WsewNewswitchこの目標達成時、全固体電池事業は現在の主力事業(一次電池、粘着テープ等)に次ぐ第3の収益柱として、マクセルの事業ポートフォリオを大きく変革する可能性がある。

投資規模としては、2030年度までに100億円規模の累計投資を計画。さらに大容量産業機器向けには数百億円を追加投資する方針である。 Nikkei


結論:割安な成長株として注目に値する

マクセルは、全固体電池という次世代技術で世界に先駆けて量産を実現した稀有な企業である。 perspectives株価はPER 14.7倍、PBR 1.08倍と同業他社比で明らかに割安であり、財務基盤も自己資本比率57%超と極めて健全。 Yahoo! Finance営業利益は2ケタ成長を達成し、中期経営計画も順調に進捗している。

投資判断のポイントは以下の3点に集約される。第一に、全固体電池事業の採用拡大と収益化の進展。第二に、村田製作所からの一次電池事業譲受による規模拡大効果。第三に、2027年3月期のMEX26目標(売上高1,500億円、営業利益120億円)の達成可否である。 Maxell

全固体電池市場は2030年代に向けて爆発的な成長が見込まれており、 Fuji-keizai小型~中型セグメントで先行者優位を持つマクセルは、その成長を取り込める有力候補である。短期的な業績変動よりも、中長期的な事業構造の変革に注目すべき銘柄といえる。

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