高市早苗内閣で上がる日本株:防衛・原発・半導体関連銘柄を徹底調査

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高市早苗氏が10月21-22日に日本初の女性総理大臣に就任する見込みとなり、市場は「高市トレード」と呼ばれる新たな投資テーマに注目している。防衛費GDP比3.5%超への引き上げ、原子力発電の最大活用、半導体産業への10兆円投資、サイバーセキュリティ強化といった政策により、関連銘柄は短期的に大きな恩恵を受ける可能性が高い。特に防衛関連株は10月6日に日経平均が4.8%上昇する中で顕著な上昇を記録し、原子力関連では関西電力が+5.8%、東京電力が+6.5%と急騰した。半導体・サイバーセキュリティ分野でも政府の経済安全保障政策が追い風となり、これらのセクターには数年規模の構造的成長が見込まれる。

本レポートでは、高市内閣下で恩恵を受ける可能性の高い具体的銘柄を、防衛、エネルギー、半導体、サイバーセキュリティ、インフラの各セクター別に分析する。証券コード、最新株価、投資根拠を含む詳細情報により、短期投資戦略の構築を支援する。

高市早苗の政策方針と市場への影響

高市早苗氏は10月4日の自民党総裁選で勝利し、10月20日に日本維新の会との連立合意を締結、10月21-22日の国会指名選挙で第104代内閣総理大臣に就任する見通しだ。自民党史上初の女性党首であり、安倍晋三元首相の経済政策を継承する「サナエノミクス」を掲げる。

主要政策として、防衛費をNATOの3.5%超に引き上げ(現行2%では不十分と明言)、積極的サイバー防衛法の推進、原子力発電を「100%エネルギー自給」の柱に位置づけ(2030年までに電力の20-22%を原子力で賄う目標)、半導体・AI産業に10兆円投資(ラピダスプロジェクトへの強力な支援継続)、経済安全保障の徹底(特定重要物資の供給網強化、技術流出防止)を掲げている。

市場は「高市トレード」として即座に反応し、10月6日の日経平均は4.8%上昇して47,944円の高値を記録。円安が147円から150円超へ進行し(金融緩和継続への期待)、防衛・原子力・サイバーセキュリティ関連株が急騰した。アナリストは名目成長率が名目金利を上回る「G>R」シナリオが株式市場を支援すると予測している。

防衛関連銘柄:GDP比3.5%超の防衛費拡大で恩恵

高市氏の防衛政策は、防衛費をGDP比3.5%超に引き上げる(現行の43兆円計画からさらに拡大)ことを主張し、スタンドオフ能力(長距離攻撃兵器)、電磁波戦能力、ドローン防衛、サイバー防衛、宇宙防衛資産への投資を重視する。2023-2027年の43兆円防衛予算に加え、トランプ政権の圧力により5%への引き上げも議論される可能性がある。

大手防衛企業

三菱重工業(証券コード:7011)は日本最大の防衛企業で、株価は4,412円(10月20日時点、+2.84%)、過去12カ月で+73.81%の上昇を記録した。時価総額は日本の防衛関連で最大規模。戦闘機・ミサイル、護衛艦・潜水艦、宇宙システム、防衛電子機器を製造し、日英伊次世代戦闘機プロジェクトの主契約企業でもある。FY2025売上高は5.027兆円(+7.9%)、純利益2,454億円(+10.6%)で、防衛・宇宙部門の受注が前年比36%増と急拡大している。高市内閣では防衛費増額の最大受益者となり、多角化された収益構造(ガスタービン、航空宇宙)がリスクを分散する。ただしPER 43倍と高バリュエーションであり、さらなる上昇余地は限定的との見方もある。

**川崎重工業(7012)**の株価は9,902円(+1.79%)で、52週高値の10,000円に接近している。日本第2位の防衛企業として、潜水艦(三菱重工と交互受注)、哨戒機・輸送機、ヘリコプター、防衛艦船を製造。FY2025売上高2.129兆円(+15.1%)、純利益880億円(+246.8%と大幅回復)、防衛契約は約5,600億円(+40%)に達した。PER 20倍と三菱重工より割安で配当利回り1.5%。ただしFY2026予想では増収ながら減益見通しであり、営業利益率が5%程度と低い点がリスク。

**IHI(7013)**は2,878円(2025年9月30日に1:7の株式分割実施、分割前換算で約20,146円相当)で、10月に史上最高値を更新し年初来で大幅上昇。航空宇宙エンジン(戦闘機F-15、F-2、次世代戦闘機)、ミサイルシステム、宇宙システムが主力。FY2025売上高1.627兆円(+23.0%)、純利益1,127億円(前年赤字から黒字転換)、防衛事業を2022年の1,000億円から2030年に2,500億円へ拡大する目標を掲げる。民間航空機エンジンの整備需要回復も追い風で、PER 18.4倍と三菱重工より割安ながら成長軌道にある。株式分割により個人投資家の買いやすさも向上した。

中堅・専門防衛企業

**日本製鋼所(5631)**は株価9,845円で、日本唯一の火砲・砲身製造企業として独占的地位を持つ。大型鍛造品、防衛装備品を生産し、弾薬拡充計画の直接的受益者となる。

**NEC(6701)**は防衛事業として指揮統制システム、レーダーシステム、通信装備、衛星システムを提供。防衛IT・通信インフラのリーダーであり、サイバー防衛能力、宇宙監視システムでも強み。10月には準天頂衛星「みちびき」関連装備の受注を獲得。

**三菱電機(6503)**はレーダーシステム(パトリオットミサイル)、防衛衛星、ミサイル誘導システム、艦載戦闘システムで主導的地位。株価は史上最高値に接近しており、防衛部門が成長を牽引している。

**東京計器(7721)**は株価4,805円(+4.22%)で、海事・航空計器、防衛航法システム、ジャイロコンパスを製造。2026年第1四半期の防衛・通信セグメント売上は前年比+21.3%と好調。艦船・航空機向け専門装備で防衛省調達シェアが高い。

小型防衛関連株(高ベータ銘柄)

**細谷火工(4274)**は株価1,300-1,400円レンジで、軍用照明弾、発煙筒を自衛隊向けに製造する小型株。2025年第3四半期の営業利益は36.1億円(前年比2.8倍)と急拡大。過去には地政学的緊張で2,000円超まで急騰した実績があり、防衛関連テーマでの値動きが大きい

**石川製作所(6208)**は標準市場上場で、株価約1,843円。機雷、爆雷、爆弾ケーシングを製造する小型株で、地域安全保障の緊張時に出来高が急増し株価が大きく変動する特徴がある。

**豊和工業(6203)**は株価約1,206円で、工作機械と小火器(ライフル、機関銃)を製造。日本の小火器製造の中心企業であり、小型株ゆえに短期的な急騰の可能性がある。

**ナブテスコ(6268)**は株価2,300-2,400円で、飛行制御作動装置(FCA)で国内シェア100%を誇る。民間ロボット分野にも多角化している。

これらの小型株は高ボラティリティだが地政学リスク時に大きく上昇する傾向があり、短期トレーダー向けの戦術的投資対象となる。一方、緊張緩和時には急落リスクもある。

防衛セクター投資戦略

コア保有(大型株・安定性重視):三菱重工(7011)は旗艦銘柄だが割高、IHI(7013)はリスク・リターンバランスが良く民間航空によるダウンサイド保護あり。成長・モメンタム投資(中型株):東京計器(7721)、ナブテスコ(6268)。高ベータ戦術投資(小型株):石川製作所(6208)、細谷火工(4274)、豊和工業(6203)は地政学イベント時の短期トレード向け。

リスク要因として、政策変更、低利益率(営業利益率5-7%が一般的)、大型プロジェクトの損失リスク、輸出規制による成長制約、高バリュエーション(三菱重工PER 43倍)が挙げられる。現在の株価水準は多くの楽観を織り込んでおり、短期調整の可能性もある。

原子力・エネルギー関連銘柄:原発最大活用政策で復活

高市氏は「100%エネルギー自給」を戦略目標に掲げ、原子力発電を中核に位置づける。既存原子炉の再稼働加速(33基の商業炉のうち現在14基が稼働、残りの迅速な再稼働を目指す)、次世代炉(小型モジュール炉SMR、次世代革新炉)の開発・導入、核融合技術への投資(2030年代の実証を目標)、外国製太陽光パネルへの反対とペロブスカイト太陽電池の国内開発支援を掲げる。

2025年2月の第7次エネルギー基本計画では2040年までに電力の20%を原子力で賄う目標が設定され(2023年は6%)、「原子力依存度を可能な限り低減」とした前計画から「原子力の最大限活用」へ大転換した。これはエネルギー安全保障、AI・データセンターの電力需要、脱炭素化の要請によるものだ。

市場は即座に反応し、10月6日に関西電力が+5.8%、東京電力が+6.5%上昇。一方で再生可能エネルギー開発企業は-14%から-15%下落した。

原子炉メーカー・サービス企業

**三菱重工業(7011)**は4,290円(10月18日時点)で年初来+90%。PWR(加圧水型原子炉)の主導的メーカーで、先進的APWR設計と次世代SRZ-1200(1.2GW、2030年代半ば商業化目標)を開発中。小型モジュール炉(300MW級)も開発している。2017年にフラマトーム(旧アレヴァ原子炉事業)の19%株式を取得。茨城県東海村で核燃料製造工場を運営(年間440トンウラン処理能力)。原子炉再稼働支援、特別安全施設、新設建設で恩恵を受ける。世論調査では原子炉再稼働支持が70%に達しており、追い風。

**日立製作所(6501)**は4,490円で年初来+13.9%、時価総額20.37兆円。BWR(沸騰水型原子炉)専門で、2007年にGE日立ニュークリア・エナジーを設立。しかし英国原子力プロジェクトでの巨額損失(2020年に2,964億円減損)を受け、戦略的にデジタルシステムと再生可能エネルギーにシフトした。2021年12月にカナダOPGから小型モジュール炉BWRX-300の建設を受注(ダーリントン・サイト2基)。東京電力・中部電力とBWR事業統合の合弁会社を設立。

**IHI(7013)**は2,886.5円で年初来+142.2%と防衛・航空宇宙と合わせて急騰。原子炉格納容器、圧力容器、鋼構造物、高レベル放射性廃棄物ガラス固化設備を製造する。

電力会社(原子力資産保有)

**東京電力ホールディングス(9501)**は759円で、年初来+26.3%、6カ月で+88.2%の急騰。時価総額1.19兆円。**世界最大の柏崎刈羽原子力発電所(7基)**を保有するが、福島第一原発事故の債務により政府管理下にある。6号機・7号機は規制当局の承認を得たが地元の反対が続き、7号機の再稼働目標は2029年、6号機は2031年に後退。2025年夏の再稼働は不可能と判断され、株価は再稼働期待と遅延懸念の間で変動している。

**関西電力(9503)**は1,984.5円で、年初来-13.1%だが6カ月で+38.7%。時価総額2.21兆円。日本の電力会社の中で最も原子力依存度が高く、美浜発電所(3基)、高浜発電所(4基、1・2号機は2023年8-9月に再稼働)、大飯発電所(4基)を保有。再稼働で先行しており、高市内閣下での原発推進政策の最大受益者の一つ。PER 8.55、配当利回り2.64%。

**九州電力(9508)**は1,506円で年初来-12%だが6カ月で+22.9%。時価総額7.14兆円。川内原子力発電所(2基、福島後最初に再稼働)、玄海原子力発電所(2基稼働中)を保有。TSMCの熊本工場稼働による電力需要増が追加の株価材料。PER 6.22、配当利回り3.32%。

**中部電力(9502)**は2,143円で年初来+22.8%、6カ月+27.2%。浜岡原子力発電所(5基、現在停止中)を保有。東京電力・日立とのBWR事業合弁に参加。

**東北電力(9506)**は1,074.5円で年初来-28%だが6カ月+11.7%。女川原子力発電所2号機(796MW)が2024年11月に再稼働し、東日本のBWRとしては初めて。配当利回り3.72%。

**北海道電力(9509)**は1,147.5円で年初来+12.2%、6カ月+81.6%と急騰。泊原子力発電所(3基PWR)を保有し、2025年4月に泊3号機が原子力規制委員会の安全審査を通過(2021年以来初の承認)、2027年の再稼働が見込まれる。PER 9.6、配当利回り2.61%。

中国電力は島根原子力発電所2号機(789MW)が2024年12月に再稼働し、2025年1月に営業運転開始。西日本初のBWR再稼働。

**北陸電力(9505)**は895円で年初来-7.7%。志賀原子力発電所(2基、2011年以降停止)を保有するが、2024年1月の能登半島地震により発電所が被災し、再稼働には数年規模の安全評価が必要。PER 6.27、配当利回り2.24%。

原子力建設・エンジニアリング企業

**JESCOホールディングス(1434)**は119,400円で年初来+19%、6カ月+41.5%。原子力発電所の電気計装・制御システムを手がける。PER 7.55、配当利回り4.02%。

**東京エネシス(1945)**は1,744円で年初来+47.2%、6カ月+68.2%と大幅上昇。原子力発電所の建設・保守、地震・津波対策工事を実施。PER 17.05、配当利回り3.27%。

**新日本空調(1952)**は2,953円で年初来+70.9%、6カ月+61.9%。原子力施設のHVAC(空調設備)とインフラの設計・施工・保守を担当。PER 15.21、配当利回り2.71%。

**高田工業所(1966)**は1,623円で年初来+10.8%。使用済み燃料貯蔵用のステンレスプール建設を手がける。PER 8.42、配当利回り4.31%。

**太平電業(1968)**は2,167円で年初来+20.8%、6カ月+35%。日本の原子力発電所の70%の建設に関与し、原子炉容器設置、蒸気発生器設置、廃炉作業を実施。PER 12.9、配当利回り3.09%。

**日本製鋼所(5631)**は10,090円で年初来+76.8%、6カ月+69%。**原子炉圧力容器と鍛造部品の世界最大製造能力(670トン)**を持つ。PER 40.13、配当利回り0.87%。

**岡野バルブ製造(6492)**は9,180円で年初来+74.9%、6カ月+100%と倍増。原子力発電所向け高温高圧バルブを製造。PER 17.54、配当利回り0.65%。

助川電気工業(7711)は11,120円で年初来+452.4%、6カ月+570.3%と驚異的な上昇。高速増殖炉装置、電磁ポンプ、制御システムを製造。PER 74.04と高バリュエーションだが、原子炉再稼働モメンタムで小型株として最高のパフォーマンスを記録。

**木村化工機(6378)**は1,161円で年初来+55.6%、6カ月+72%。核燃料輸送容器、濃縮装置、放射性廃棄物処理装置を製造。PER 12.67、配当利回り3.53%。

原子力セクター投資戦略

直接的な原子力投資:複数の原子炉再稼働準備が整っている関西電力(9503)、東京電力(9501)。設備・サービスプロバイダー:再稼働のメンテナンスと安全向上を支援する企業群が強いモメンタムを示している。次世代技術:小型モジュール炉と先進設計を開発する製造企業。

電力会社は依然として割安(PBR 0.4-0.9)だが再稼働進展で上昇余地あり。製造企業は大幅にリレーティングされ(三菱重工PER 64、PBR 6.2)、装備メーカーは高成長期待を織り込んでいる。配当利回り2-4%の電力会社は防御的な投資対象。

リスク要因として、規制遅延(泊3号機の審査に12年)、地元反対による無期限遅延、核廃棄物処分場の未解決、地震リスク(2024年能登半島地震による志賀発電所への影響)、福島事故の遺産が根強い懸念として残る。

半導体・先端技術関連銘柄:10兆円投資とラピダス支援

高市氏は半導体・AI産業への10兆円投資を2030年まで継続すると明言し、ラピダスプロジェクト(2nm最先端チップの国産化)、半導体エコシステム開発、先端パッケージング技術、パワー半導体(EV・再生可能エネルギー向け)、メモリ・センサー・アナログチップの強化を掲げる。これは経済安全保障の中核政策であり、台湾・韓国への依存を減らし、米国Chip 4同盟への参加を強化する。

政府は2021年以降すでに3.9兆円を配分しており、2030年までに国内半導体売上を2020年比3倍の15兆円、経済効果160兆円を目標とする。

主要半導体製造装置企業

**東京エレクトロン(8035)**は株価30,080円、時価総額13.78兆円で、世界第3位の半導体製造装置メーカー。ウェーハエッチング、成膜、洗浄装置のリーダー。元CEOの東哲郎氏が現在ラピダスを率いる。FY2025売上高2.43兆円(+32.8%)、営業利益6,973億円(+52.8%)、配当利回り約2.2%、PER約23倍。AI向け半導体製造装置需要で好調。ラピダスとTSMC熊本の主要装置供給企業として直接的な受益者。

アドバンテスト(6857)は株価14,865円、時価総額12.65兆円で、半導体テスト装置の世界的リーダー。品質管理に不可欠で、AI向けチップのテスト需要が拡大。ラピダスの2nmチップテストに必須の供給企業。日経平均への寄与度が最大級で、機関投資家の買いが旺盛。「後工程」半導体プロセスでEPS成長が特に強い

**ルネサスエレクトロニクス(6723)**は株価1,909円、時価総額3.45兆円で、日本最大の半導体デバイスメーカー。自動車向けマイコンとパワー半導体のリーダー。2023年に経済安全保障推進法に基づき159億円の補助金を獲得し、12インチウェーハのパワー半導体生産ラインに900億円を投資。2023年11月に政府系INCJ(69%保有)から完全に独立。FY2024第3四半期売上3,255億円、配当利回り1.46%。アナリスト目標株価は1,850円-2,800円。EV電動化の重要サプライヤーとして日本の産業戦略に合致。

半導体製造装置・材料企業

**SCREENホールディングス(7735)**は株価13,480円、時価総額1.296兆円。半導体製造装置の主要メーカーで、フォトリソグラフィのコーター/デベロッパーシステム、ウェーハ洗浄・処理装置に強み。FY2025売上高6,253億円(+23.8%)、営業利益1,357億円(+44.1%)と過去最高を記録。PER約13倍と成長率に対して割安。ラピダスの2nm生産ラインの主要装備サプライヤーで、特にEUVリソグラフィに必須のコーティング・現像システムを供給。

**ディスコ(6146)**は株価46,750円、時価総額5.7兆円。精密切断・研削・研磨装置の世界的リーダーで、「切る、削る、磨く」の独自技術を持つ。ウェーハダイシング装置で圧倒的なグローバルシェア。先端パッケージング工程で重要な役割を果たす。日本の後工程半導体戦略はパッケージング・アセンブリを明示的に強調しており、ディスコは技術的リーダーシップを保持。

**レーザーテック(6920)**は株価20,420円、時価総額1.948兆円で直近+5.34%。半導体検査装置の専門メーカーで、EUVマスク検査システムのリーダー。先端ノード生産における品質管理装置として不可欠。ラピダスの2nmチップマスク検査の必須サプライヤーで、このノードでEUVペリクルとマスク欠陥検査能力を持つ世界唯一の企業

**信越化学工業(4063)**は株価4,897円で、自己資本比率82.6%。世界最大の半導体シリコンウェーハメーカーで、フォトレジスト材料でもグローバルシェア約30%を持つ。レアアースマグネット、半導体封止材も生産。群馬県の新工場に830億円を投資し先進リソグラフィ材料を製造。FY2025第1四半期でウェーハ販売+3.0%、営業利益+11.8%。純利益率21.15%と同業他社で最高水準。実質無借金(EBITDA比率ゼロ)、流動性1.7兆円、2024年12月に939.8億円の自社株買いを発表。日本の半導体サプライチェーン安全保障戦略で重要サプライヤーに指定

SUMCO(3436)は世界第2位のシリコンウェーハメーカー(信越化学に次ぐ)。三菱マテリアルとの合弁事業を展開し、300mmウェーハ生産能力を拡大中。国内ウェーハ供給は経済安全保障上不可欠とされ、リショアリング(国内回帰)施策の受益者。

**JSR(旧上場、現在は政府所有)**は2024年夏に上場廃止し、政府系の産業革新投資機構(JIC)が約1兆円(70億ドル)で買収した。**世界最大のフォトレジストメーカー(グローバルシェア27%)**で、EUVフォトレジスト開発の中心企業。SKハイニックスやベルギーのIMECと次世代EUV材料で協働し、2026年に韓国初の半導体フォトレジスト工場を稼働予定。民営化の理由は半導体材料産業を統合し、四半期決算のプレッシャーなしで投資を加速するためであり、戦略的重要性の明確なシグナル。

ラピダスと政府支援プロジェクト

**ラピダス(非上場・非取引)**は2022年8月設立で、トヨタ、ソニー、NTT、ソフトバンク、デンソー、キオクシア、三菱UFJ銀行、NECが73億円を初期投資。政府補助金は累計9,200億円(2024年まで)、FY2025にさらに1,000億円追加配分、政府の総コミットメントは1兆円超(65億ドル)。量産フェーズにはさらに1-3兆円が必要とされる。

2025年4月にパイロット生産開始(2nmチップ)、2027年に量産目標。製造拠点は北海道千歳市。プロセス技術は2nm(IBMおよびベルギーIMECとのパートナーシップ)。

公開企業の間接的受益者は、東京エレクトロン(8035)が主要装置供給、SCREENホールディングス(7735)がコーティング・現像装置、アドバンテスト(6857)がテスト装置、レーザーテック(6920)がマスク検査システム、信越化学(4063)がウェーハと材料供給、ディスコ(6146)が後工程処理装置。

ラピダスは日本が先端半導体製造で地位を取り戻す「最後のチャンス」(会長自身の言葉)とされる。成功すれば国内装置・材料サプライヤーへの莫大な持続的需要が発生する。

**TSMC熊本(JASM)**は政府から2工場に1.2兆円の補助金を受け、12nm、16nm、22nm、28nmプロセスノードを製造。第1工場は2024年2月に稼働、2024年第4四半期に量産開始。第2工場は建設中で、2025年以降に5nmおよび10nmノードを予定。日本企業からの調達は装置・材料の60-70%と推定され、サプライチェーン全体が恩恵を受ける。

半導体セクター投資戦略

コア保有(最高確信度):東京エレクトロン(8035)は日本半導体装置の「至宝」でラピダス直接受益者、AI インフラ投資の恩恵。信越化学(4063)は自己資本比率82%の防御的優良株で材料独占、政府指定重要サプライヤー。アドバンテスト(6857)はテスト装置の寡占、全先端ノード生産に不可欠、強力なキャッシュフロー。

成長・高ベータ投資:SCREENホールディングス(7735)は割安(PER 13倍)ながら過去最高成長、EUV向けコーティング・現像装置が重要。レーザーテック(6920)はEUVマスク検査の独占、ラピダス成功時に爆発的成長の可能性がある小型株。ディスコ(6146)は後工程装置のリーダーで、パッケージング・アセンブリのリショアリング戦略の受益者。

バリュー・回復投資:ルネサスエレクトロニクス(6723)は年初来-10%だが自動車半導体回復の投資テーマ、政府支援による安定性、配当利回り1.5%。

分散投資:Global X Japan Semiconductor ETF(2644)はバスケット・アプローチで主要銘柄すべてを上位10保有に含み、個別銘柄リスクを低減。

リスク要因として、ラピダスの実行リスク(技術的または商業的失敗の可能性、TSMC/サムスンに2-3世代遅れている)、半導体装置は歴史的に高度に循環的、現在のAIブームが2026-2027年に減速する可能性、中国の設備投資減速(輸出規制の影響)、地政学リスク(米中緊張による日本企業の中国売上20-30%への影響、輸出規制の強化、台湾有事がサプライチェーン全体を混乱させる可能性)、バリュエーションリスク(東京エレクトロンPER 23倍は歴史的高水準、AI駆動成長への期待が既に織り込まれている)、政治リスク(ラピダス失敗時の納税者負担への批判、2012年のエルピーダメモリ破綻の記憶)がある。

サイバーセキュリティ・重要インフラ関連銘柄:能動的サイバー防御で急拡大

高市氏は自民党サイバーセキュリティ対策本部の初代本部長であり、2025年5月に成立した能動的サイバー防御法を主導した。政府による先制的サイバー作戦の権限、SIGINT(信号諜報)能力の開発、NSAに類似する政府専用サイバー機関の必要性を訴える。企業にはセキュリティソフトの強制更新、定期的なサイバー防衛訓練、セキュリティインシデント報告義務を課す方針。

日本のサイバーセキュリティ市場はCAGR 13.6-22.6%で成長し、2030-2032年までに268億-389億円に達すると予測される。政府の経済安全保障推進法(2022年5月施行)、ランサムウェア攻撃の急増(KADOKAWA、JAXA、複数自治体が2024年に被害)、地政学的緊張(中国、ロシア、北朝鮮の国家支援攻撃増加)、2027年大阪万博などの大規模イベント向けセキュリティ需要が成長を牽引する。

純粋なサイバーセキュリティ企業

**トレンドマイクロ(4704)**は株価7,700-9,150円、時価総額1.0-1.2兆円。グローバルなサイバーセキュリティリーダーで、Vision Oneプラットフォーム、XDR(拡張検知・対応)、クラウド・エンドポイントセキュリティを提供。FY2024売上高2,726億円(+9.6%)、純利益344億円(+220%)、営業利益率28.26%。グローバルに25,000の企業顧客、顧客の74%が4モジュール以上を使用。配当利回り1.96-2.25%。日本最大のサイバーセキュリティ企業で政府との強固な関係を持ち、重要インフラ保護を含む経済安全保障イニシアティブに参画。2月に史上最高値12,160円を記録したが、現在は調整中。

**サイバーセキュリティクラウド(4493)**は株価1,750-2,820円、時価総額193億円-122百万ドル。AI搭載のWebセキュリティ(WAF Shadankun、WafCharm、AWS WAF自動化)を提供。従業員136名、売上高2,960万ドル(TTM)。年初来-37.94%と高ボラティリティ(ベータ1.50)だが、AI駆動の脅威検知で高成長が見込まれ、経済安全保障政策の受益者。

**デジタルアーツ(2326)**は株価5,450-7,400円、時価総額960億-982億円。インターネットセキュリティソフトウェアおよびアプライアンスを日本、米国、欧州、アジア太平洋向けに提供。年初来+37.1%から+40.4%と強力なパフォーマンス。実績ある企業で、企業セキュリティ支出増加の恩恵を受ける。

**ラック(3857)**は株価762-1,790円。ネットワークセキュリティ専門企業で、日本最大のネットワークセキュリティ監視センターを運営。情報セキュリティ構築とログ解析サービスが主力。政府・企業セキュリティインフラの重要プレーヤーで、専門的な専門知識を持つ。

**ソリトンシステムズ(3040)**は株価1,571円、時価総額274億円で年初来+21.0%。ITセキュリティと組込みシステムを手がけ、多要素認証(Soliton OneGate)に強み。認証・セキュアリモートアクセスで好調なパフォーマンス、海外サービス拡大中。

**FFRIセキュリティ(3692)**は株価971円で+2.12%。サイバーセキュリティ製品とサービスを提供する専門技術プロバイダー。

**グローバルセキュリティエキスパート(4417)**は株価4,150-6,290円で変動が大きい(2024年7月に6,290円のピーク後下落)。セキュリティコンサルティングと教育サービス、包括的なセキュリティトレーニングを提供。セキュリティ専門知識への需要増加、教育重視は政府の人材開発イニシアティブに合致。

AMIYA(4258)は株価1,012-4,195円、時価総額299億-317億円で年初来+205.3%と驚異的な成長。サイバーセキュリティ製品とサービスの開発・製造。純粋なセキュリティ株の中で最高成長、強力なモメンタム。

ITインフラ・クラウドセキュリティプロバイダー

**NEC(6701)**は株価3,755円、時価総額5.0兆円で+3.30%。包括的なIT・ネットワークインフラ、NECセキュリティ子会社を持つ。政府契約として、GREEN×EXPO 2027のサイバーセキュリティ契約受注、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)との協力、政府機関向け重要インフラセキュリティ、先進サイバーインテリジェンス・オペレーションセンター(FY2025下半期開設)。日本最大のITサービス企業で政府との深い関係、重要インフラ保護のリーダー、経済安全保障マンデートの受益者。

**富士通(6702)**は株価3,320円、時価総額5.9兆円で+3.85%。フルICTサービス、エンタープライズセキュリティ、マネージドセキュリティサービスを提供。政府契約としてNEDOのポスト5Gインフラ強化研究開発、重要インフラサイバーセキュリティ。主要政府請負業者で包括的セキュリティサービス、インフラ近代化の受益者。

**インターネットイニシアティブ(IIJ、3774)**はネットワークサービス、クラウドセキュリティ、重要インフラサービスを提供。主要ISPでセキュリティサービスあり、政府・企業重視。コアインターネットインフラプロバイダーで経済安全保障法の受益者。

重要インフラ保護専門企業

**コンピューターエンジニアリング&コンサルティング(9692)**は株価2,282円、時価総額699億円で年初来+24.0%。デジタル産業と重要インフラ向けシステムインテグレーションを手がける。強力なパフォーマンス、インフラデジタル化の受益者。

**オプティム(3694)**は株価545-574円、時価総額300億-301億円で年初来-8.2%から-10.5%。IoTプラットフォーム、リモート管理、サポートサービスを提供。産業・インフラ向けIoTセキュリティ。

サイバーセキュリティセクター投資戦略

大型コア保有(低リスク):NEC(6701)は時価総額5.0兆円で政府パートナーシップ、包括的サービス。富士通(6702)は時価総額5.9兆円で重要インフラのリーダー。トレンドマイクロ(4704)は時価総額1.0兆円でグローバルリーダー、安定配当(利回り2.25%)。

中型成長株(中リスク):デジタルアーツ(2326)は年初来+40.4%の強力パフォーマンス、時価総額960億円。SRAホールディングス(3817)は安定した+18.3%成長、時価総額632億円。コンピューターエンジニアリング(9692)は+24%でインフラ重視。

小型高成長株(高リスク):AMIYA(4258)は+205%で最高成長。TRADE WORKS(3997)は+116%で金融セキュリティのニッチ。SOLXYZ(4284)は+47.8%でシステムインテグレーション。サイバーセキュリティクラウド(4493)は変動大だがAI駆動のクラウドセキュリティ専門。

経済安全保障推進法は、サイバーセキュリティを日本最大企業と政府機関全体で取締役会レベルの問題にするパラダイムシフトを代表する。**政府との確立された関係、包括的なサービス提供、実績のある企業(NEC、富士通、トレンドマイクロ、ラック)**が、この数年規模の投資サイクルを獲得する最良のポジションにある。

その他の注目セクターと銘柄

インフラ・建設関連

高市氏は送配電網の近代化、港湾物流インフラへの投資を掲げており、電力インフラ関連企業(送電鉄塔、変電所、スマートグリッド)、建設・エンジニアリング企業(インフラ建設大手)が恩恵を受ける可能性がある。

宇宙産業

防衛政策の一環として宇宙防衛資産への投資を重視しており、IHI(7013)の宇宙システム部門三菱重工(7011)の衛星・ロケット事業NECの衛星システムが受益者。2025年10月にIHIはICEYEと衛星コンステレーション開発でパートナーシップを発表。

量子コンピューティング

先端技術投資の一環として量子コンピューティングを重視。**フィックスターズ(関連銘柄として市場で注目)**などの量子技術研究開発企業が長期的な受益者となる可能性。

ペロブスカイト太陽電池

外国製太陽光パネルに反対し、国産ペロブスカイト太陽電池の開発を支援する方針。ペロブスカイト太陽電池開発企業が政府支援の受益者となる。

リスク要因と投資上の注意点

政治リスク

高市内閣は自民党231議席と維新44議席の連立で、過半数(233議席)に2議席不足する脆弱な状況。野党の結束により政策が頓挫する可能性がある。また高市氏のLDP総裁任期は2年間であり、政策の持続性に不透明感がある。

財政持続可能性

日本の政府債務はGDP比260%超であり、無制限の国債発行の持続可能性に疑問。格付け機関による格下げリスクもある。

日銀の独立性

高市氏は「政府が責任を持つ」と金融政策への関与を示唆しており、日銀が政治圧力に抵抗する可能性。インフレ率が2%を超える中で、為替不安定リスクもある。

国際関係

靖国神社参拝問題により中国・韓国との関係悪化の可能性、トランプ政権の予測不能性、貿易戦争エスカレーションのシナリオがある。

バリュエーション

多くの関連銘柄は既に大幅に上昇しており、楽観的な見方が織り込まれている。三菱重工はPER 43倍、東京エレクトロンはPER 23倍と歴史的高水準にあり、調整リスクがある。

実行リスク

ラピダスは技術的・商業的に未証明で失敗の可能性がある。防衛プロジェクトは大規模な損失を招く可能性があり、原子炉再稼働は地元反対により無期限に遅延する可能性がある。

投資戦略の推奨事項

短期投資(0-6カ月)

防衛関連株:三菱重工(7011)、IHI(7013)、東京計器(7721)。地政学的緊張や防衛予算発表時に上昇しやすい。原子力関連株:関西電力(9503)、北海道電力(9509)、太平電業(1968)。再稼働ニュースで即座に反応。サイバーセキュリティ:NEC(6701)、トレンドマイクロ(4704)。能動的サイバー防御法の施行で恩恵。金融機関:イールドカーブのスティープ化が銀行の収益性を改善。

中期投資(6-18カ月)

半導体製造装置:東京エレクトロン(8035)、SCREENホールディングス(7735)、アドバンテスト(6857)。ラピダスとTSMC熊本第2工場の進展。先端材料サプライヤー:信越化学(4063)、SUMCO(3436)。国内エネルギーインフラ:電力会社、送配電インフラ企業。医薬品・ヘルスケア:高市氏は診療報酬・介護報酬の即時引き上げを約束。

長期投資(18カ月以上)

ラピダス関連サプライチェーン:半導体製造装置・材料企業。2027年の量産決定が重要な分岐点。量子コンピューティング研究開発:政府の長期投資テーマ。核融合技術:高市氏の個人的優先技術だが、商業化まで数十年かかる投機的投資。宇宙産業バリューチェーン:防衛・商業宇宙の両面で成長。

ポートフォリオ構成例

保守的ポートフォリオ(リスク低):50%大型防衛・半導体株(三菱重工、東京エレクトロン、信越化学)、30%電力会社(関西電力、九州電力、配当利回り重視)、20%大型サイバーセキュリティ・ITインフラ(NEC、富士通、トレンドマイクロ)。

バランス型ポートフォリオ(リスク中):30%大型株(三菱重工、東京エレクトロン)、40%中型成長株(IHI、SCREENホールディングス、アドバンテスト、デジタルアーツ)、20%電力会社、10%小型専門企業(東京計器、太平電業)。

積極的ポートフォリオ(リスク高):40%中型成長株、30%小型株(助川電気工業、岡野バルブ製造、細谷火工、AMIYA、レーザーテック)、20%テーマ別ETF、10%新規上場株(Caulis、Hammock)。

結論

高市早苗内閣の政策方針は、防衛、原子力、半導体、サイバーセキュリティの各セクターに数年規模の構造的成長をもたらす可能性が高い。10月4日の総裁選勝利以降、市場は即座に「高市トレード」として反応し、関連銘柄は大幅に上昇した。

最も確実性の高い投資機会は、政府の長期コミットメントが明確な半導体産業(10兆円投資)と防衛産業(43兆円以上の予算)である。原子力は再稼働の加速で電力会社が恩恵を受けるが、規制・地元反対による遅延リスクがある。サイバーセキュリティは経済安全保障推進法による強制的な需要創出で確実な成長が見込まれる。

短期投資では、政策発表や地政学イベントに敏感な防衛・原子力関連株、特に小型株(細谷火工、助川電気工業など)が大きな値動きを示す可能性がある。中長期投資では、半導体製造装置(東京エレクトロン、SCREENホールディングス、アドバンテスト)と材料サプライヤー(信越化学)が、ラピダスとTSMC熊本の進展により持続的な成長を享受する。

ただし、高市内閣の政治基盤は脆弱(過半数に2議席不足)であり、政策実行力に不透明感がある。また多くの関連銘柄は既に大幅に上昇しており(三菱重工+73.81%、IHI+142.2%など)、短期的な調整リスクもある。投資家は政策の進捗状況、ラピダスのマイルストーン、原子炉再稼働の承認状況、地政学的展開を注意深く監視する必要がある。

重要な監視ポイント:国会での予算承認状況、ラピダスの2025年4月パイロット生産開始、TSMC熊本第2工場の進捗、原子炉再稼働承認(特に柏崎刈羽、泊)、能動的サイバー防御法の実装、トランプ政権との貿易・防衛交渉、円ドル為替レート(輸出競争力に影響)、月次の半導体製造装置受注データ(SEAJ発表、先行指標)。

高市内閣の政策は構造的かつ長期的な投資テーマを提供するが、実行リスクと政治的不確実性を考慮した慎重なポートフォリオ構築とリスク管理が不可欠である。

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