日経平均4万円台回復の背景と要因

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1. 国内経済指標・景気動向

最近の日本経済は緩やかな回復基調だが物価上昇率はやや鈍化している。東京都区部のコア消費者物価指数は前年比+3.1%(6月時点)と前月より伸びが縮小し、3%台前半に低下bloomberg.co.jp。企業業績面では、値上げ転嫁で売上高は4四半期連続増加も、円高進行で経常利益は足元で減少傾向にあるjri.co.jp。こうした中、日本国内では設備投資やデジタル化投資が堅調で、PC買い替え需要やAI関連需要も景気下支え材料となっているjp.reuters.comjri.co.jp。一方、参院選を控え政策期待も高まり、夏場に向けた先高観が市場心理を後押ししているjp.reuters.com

2. 日銀の金融政策・金利動向

6月16~17日の金融政策決定会合で日銀は無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.50%程度に据え置いたsmd-am.co.jp。想定どおりの据え置きで、超低金利下での長期金利抑制(イールドカーブコントロール)も継続されている。マクロ面では今後、国内インフレや国債発行ペース動向が注視されるが、当面は金利上昇局面とは見られていない。なお、米国では利下げ期待が高まっており、NY金利が低下する中で新発10年物国債利回りは1.425%程度(6月27日時点)となったbloomberg.co.jp。こうした日米金利差の動向も為替・株式に影響する視点となっている。

3. 主要企業の業績・決算内容

大手企業の業績は全体的に底堅い。輸出型企業では円安メリットからトヨタ自動車やホンダなど輸送機器株が追い風を受け、電機部品・電子部品企業(住友電工、三菱電機など)は株価を押し上げたbloomberg.co.jpjp.reuters.com。一方、半導体関連では東京エレクトロンやディスコ、ソフトバンクG(半導体サーバー投資期待)が好調で、4月の底打ち以降に株価を大きく伸ばしているbloomberg.co.jpjp.reuters.com。景気敏感銘柄では非鉄金属株にも資源高の追い風が入り、証券・金融株も上昇したjp.reuters.com。薬品株や一部成長株はやや出遅れ感があり調整したが、全体として大半のプライム銘柄が上昇し、決算発表を前に買い意欲が強まった。

4. 海外市場・米国経済の影響

海外株高が日本株を後押しした。米国市場ではS&P500やナスダックが史上最高値圏に上昇しており、特にハイテク株が買い進まれたjp.reuters.com。イラン・イスラエル情勢が落ち着く中、米利下げ観測が強まり、リスクオンムードが世界的に拡大。さらに6月27日朝に米中が関税「休戦」に署名、米上乗せ関税の期限延期示唆を受けて貿易不透明感が後退し、投資家心理が改善したbloomberg.co.jpbloomberg.co.jp。NY市場の好調を背景に、東京市場も寄り付き直後から急騰。今後は米国の利下げペースや米国経済指標(GDPや雇用等)にも敏感に反応しそうだ。

5. 為替相場・円安の影響

為替市場では1ドル=144円前後で推移し、円安基調が継続している。6月27日には米中関税休戦と米税制「報復課税」条項削除の報道を受けてドル買い・円売りが優勢となり、144円台半ばまで一時円安が進行したbloomberg.co.jp。SMBCの鈴木浩史チーフ・ストラテジストは、これらはポジティブ材料だがドル買い材料としては限定的と指摘し、米経済の弱さや利下げ観測によりドル安・円高傾向継続も予想しているbloomberg.co.jp。円安は輸出企業の業績を押し上げ、日経平均にも好影響だが、一方で日本株への海外資金流入(円安による株高期待)を促す要因ともなっている。

6. セクター別の動向

セクター別には半導体・電子部品株が強く、AI関連需要拡大への期待から東京エレクトロンやディスコ、ソフトバンクGなどが高騰し指数を押し上げたbloomberg.co.jp。輸送用機器(トヨタ、ホンダ)は円安追い風で堅調、非鉄金属や商社など資源・素材関連株も上昇したjp.reuters.com。一方、鉱業や食料品、倉庫・運輸関連など景気敏感度の低い銘柄は軟調だったjp.reuters.com。業種別では情報・通信、輸送用機器、証券など29業種が値上がりし、全体的に幅広い銘柄が買われているjp.reuters.com

7. 海外投資家動向・需給要因

海外勢の買いも継続しており、需給は日米株高に引き付けられた資金流入優勢となった。UBSトラスト・マネジメントの小林千紗ストラテジストは「海外勢の買いも続いており、モメンタムが強い」と指摘し、ラリーは1週間程度続く可能性も示唆したjp.reuters.com。また、大和証券の木野内チーフテクニカルアナリストは、6月27日の配当落ちに伴う配当再投資需要でここ1~2日約2,300億円の先物買い需要が発生し、4万円回復を後押ししたと説明するjp.reuters.com。国内証券会社による大型株中心の投信設定・買いも相場を牽引し、需給面から上値を支えているjp.reuters.com

8. 専門家・市場関係者のコメント

市場関係者は総じて強気だが、不透明要因にも注意を促している。大和証券の木野内氏は「物色の裾野が広がり、AIサーバーやデータセンター関連まで買われるようになった」と相場の厚みを評価し、PC買い替え需要や参院選前の政策期待も夏まで株価を支えると見ているjp.reuters.comjp.reuters.com。一方、いちよしアセットの秋野社長は大型投信設定の資金流入と配当再投資への思惑を強調しつつ、7月9日の米関税期限に警戒感が残ると指摘するjp.reuters.com。マネクリの井出真吾ストラテジストは「企業業績予想を算出できない中で株価上昇が続いた」と慎重論を述べ、日米貿易交渉の行方次第では警戒が強まるとも指摘しているbloomberg.co.jp。全般的に、当面は米国株高・円安・資金流入など追い風が重なりやすく、業績との整合性については今後の注目点とみられている。

参考資料: 日経新聞、ブルームバーグ、ロイター等各社報道bloomberg.co.jpbloomberg.co.jpjp.reuters.comjp.reuters.comjp.reuters.com (記事中の出典リンクを参照)。

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