トランプ氏とマスク氏の対立の影響

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何が起きたのか ― 対立の経緯

  • 発端
    • 6月5日、トランプ大統領は「Big Beautiful Bill」と呼ぶ歳出・減税法案を強力に推進。その中にはEV購入税控除の廃止が盛り込まれていました。
    • イーロン・マスク氏はX(旧Twitter)上で「KILL the BILL」と書き、法案は「赤字を爆発させる」と痛烈批判。さらに「自分の支援がなければトランプは2024年選挙で負けていた」と挑発しました。reuters.comaxios.com
  • エスカレーション
    • トランプ氏は真っ向から応酬し、「マスクはクレイジーになった」「連邦契約を打ち切る」とTruth Socialで威嚇。politico.com
    • これに対しマスク氏は、SpaceXのDragon宇宙船の運用停止を示唆し、トランプ氏の弾劾まで言及。事実上、両者の提携は完全決裂しました。politico.comreuters.com

市場への即時インパクト

  • 株価の急落
    • Tesla ▲14.3%(時価総額▲1,500億ドル)
    • Trump Media(DJT) ▲8%
    • ナスダック総合 ▲0.8% 
    • 投資家は「EV税控除の消失」と「規制リスクの高まり」を懸念してテスラを投げ売り。reuters.com
  • 信用・資金調達リスク
    • テスラの社債スプレッドが拡大。格付け会社は「政策リスクに伴うネガティブ・ウォッチ」を示唆。
    • SpaceXの政府関連収入(FY 2024で売上の33%)が停止すれば、有人飛行計画やStarlink軍事契約の遅延が現実味を帯びます。politico.com

政治・政策面での波紋

項目影響の方向性主な論点
共和党内の分裂拡大マスク氏がXで「新党設立アンケート」を実施し、党中道層を揺さぶり。資金・SNS拡散力の喪失を恐れる議員が続出。axios.com
2026年中間選挙不透明感増大マスク氏は24年に約3億ドルを共和党へ投じた実績。資金の引き揚げ・対立候補支援は議席マージンを左右し得る。
法案の行方先行き不透明上院共和党の財政タカ派がマスク発言を口実に造反する可能性。歳出削減幅・EV支援策を再協議か。reuters.com
宇宙・安全保障リスク上昇Dragon停止ならISS輸送がロシア依存に逆戻り。国防総省がStarlinkをウクライナ防衛で使用中のため、代替手段確保が急務。politico.com

中長期シナリオと注視点

時期キーイベント想定シナリオ
今夏上院で「Big Beautiful Bill」審議EV減税条項・財政赤字の再設計へ。マスク氏ロビイング次第で条文修正の余地。
2025年末NASA補正予算トランプ政権が本当にSpaceX契約をカットするかが焦点。Boeing Starlinerの遅延が続く場合、議会が安全保障上の観点で軌道修正を迫られる可能性。
2026 Q1中間選挙候補者選定マスク氏が新党あるいはPACを通じ候補者擁立・資金投入を本格化させるかで議会勢力図が変動。
2026年以降産業政策・規制①EV税制、②自動運転規制、③宇宙産業契約で“報復規制”が持続するか。投資家は長期のポリティカル・リスクを織り込む必要。

日本の投資家・企業への示唆

  1. テスラ系サプライヤー
    • パナソニック・サムスンSDIなど電池メーカーは、米EV市場縮小シナリオを警戒し北米工場の稼働計画を再点検する必要。
  2. 為替・株式市場
    • 米ナスダック連動型ETFを保有する場合、テスラのウエイトが大きいためボラティリティ上昇に注意。
    • ドル円は現時点で大きな反応はないが、米財政不安シナリオが強まればリスクオフ円高圧力に転じる余地。
  3. 宇宙関連ビジネス
    • SpaceX輸送不透明化で、三菱重工H3ロケットやJAXA商業輸送への注目度が上がる可能性。

まとめ

  • 決裂は「EV税控除+歳出法案」をめぐる“政策利害”が直接の火種で、双方が人格攻撃・契約停止を持ち出したことで単なる仲違いから国家的リスクイベントへ発展。
  • 市場は即座にテスラとDJTに売りを浴びせ、ナスダックも巻き込まれた
  • 共和党内の亀裂、宇宙安全保障、EV政策、財政赤字議論が複合的に絡み合い、2026年の選挙・産業政策まで影響が波及する公算が大きい。
  • 投資家は短期の値動きだけでなく、**“契約・規制リスクの常態化”**を織り込んだ中長期ポートフォリオ戦略の再検討が必要です。
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