東北電力の増資リスク

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東北電力の増資(エクイティ・ファイナンス)履歴 ――要点まとめ

年代手法調達規模背景・使途備考
1951株式上場(引受増資)約230 億円旧電力再編で発足後の事業基盤整備上場時資本金は45 億円
1950-80年代計8回の有償増資・株式分割約2,500 億円累計火力・水力・原子力の設備投資1987年3月期で資本金 2,514 億円 に到達
1988-2025増資なし(資本金は2,514 億円で不変)株主還元優先・負債/社債で調達2007年以降の資本推移を見ても株式数は502,882,585株で固定 IR BANK

ポイント

  • 公募増資・ライツオファリングは1980年代を最後に行っていません。
  • 資金調達は 社債・CP・ハイブリッド債(劣後特約付) で賄うのが基本方針(2024年度末残高1,400 億円) 東北電力

「今期(2025年度)の“増資リスク”」とは?

文脈から「増資(=希薄化)リスクがどの程度あるか」をお尋ねと解釈して評価します。

観点現状リスク評価
自己資本比率17.5 %(ハイブリッド債50 %資本換算で20 %)業界平均(電力大手15 %弱)をやや上回り、急迫度は低い
有利子負債/EBITDA7.6倍(24年度見通し)改善中だが依然高水準。資本増強の議論余地は残る
大型投資案件①女川2号再稼働向け安全対策費 約4,200 億円(累計)
②再エネ・系統増強・GX投資 年間1,000 億円規模
いずれも 長期計画内でデット+内部留保で対応。株式発行はIR資料に明確な言及なし
直近の同業例関西電力が2025/3に約5,000 億円の公募増資を発表し株価急落 Finasee(フィナシー)東北電力にも「追随懸念」は浮上するが、調達目的が異なるため 必要性は相対的に低い
会社側コメント24-3Q決算説明で「バランスシート強化はハイブリッド債を含む負債性資本で継続」現行中計(~2027)に 新株発行は織り込まず 東北電力

まとめ評価

  • 増資(希薄化)リスク:★☆☆(低いがゼロではない)
    • 自己資本が改善し始めたばかりで、同業の大型PO直後という市場環境を考えると、当面はハイブリッド債で凌ぎつつ株価の戻りを待つシナリオが合理的。
    • もっとも、燃料市況の急変や原子力追加安全対策費の上振れで 自己資本比率が再び15 %を割り込む局面 があれば、規模の小さい第三者割当(1000億円規模)が浮上する余地はあります。

今後のチェックポイント(個人投資家向け)

  1. 自己資本比率と格付動向
    • ハイブリッド債の資本算入比率が格付機関の基準変更で下がると、一気に“増資カード”が現実味を帯びます。
  2. 女川2号の再稼働スケジュール
    • 2026年2Q商業運転が遅れると、キャッシュフローが年1,000億円規模で目減り。
  3. 政府の規制料金審査(事業報酬率)
    • 今年度の見直しでROEが2.8 → 3.5 %以上に改善すれば、自己資本積み増しのスピードが上がり、増資リスクはさらに低下。 経済産業省 EGC

参考文献

  • IR BANK「9506 東北電力 資本変動の状況」2025-01-31更新
  • 東北電力「2024年度第3四半期決算説明資料」2025-02-02
  • 東北電力「2024年度中間決算説明資料」2024-11-07
  • Finasee「関西電力、5000億円公募増資」2025-03-31
  • 経産省 電力・ガス取引監視等委員会資料「規制料金の事業報酬率検討」2024-07-10​IR BANK東北電力東北電力Finasee(フィナシー)経済産業省 EGC
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